シリーズ「学生と語る会計基準」 西川教授のポイントレッスン! 第7回 減損会計

慶應義塾大学商学部 教授 西川郁生

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木村太一君 前回(本誌 No.3246 )が減価償却で,今回は減損について語るのでしたね。

教授 減価償却は古典的・伝統的な会計,減損会計は比較的最近の会計です。減価償却は極めて単純な機械的計算を毎期繰り返すのみですね。減損については,そのためだけに使われるCGU(資金生成単位),共用(全体)資産,減損の兆候,使用価値などといった道具立てを揃えて,その道具に当てはめて,会計基準に示される計算をし,計算結果から定言的な結論が出せるように規定されていますね。ただ,その計算にどういう見積りを当て嵌めていくかは監査の現場でもしばしば見解の相違が生じるほど主観的な判断の世界ですね。

木村君 償却と減損は理屈も手法もかなり違うということから始まるのですね。

減損の意義と会計上の役割

教授 まず,減損はどういうものか考えましょうか?

木村君 企業活動として行う投資のうち,あるものが失敗したとわかったときに取り返せない(回収不能な)損失を計上するものと理解しています。

教授そうですね。本来は,投資が失敗したかどうかは,固定資産への投資で言えば,(1)既に回収済みの額,(2)将来の回収見込み額の合計と当初投資額を比較する必要があ...