厳選!現場からの緊急相談Q&A 第26回 有価証券の諸論点(優先株式の転換,簿価通算)

有限責任監査法人トーマツ 公認会計士 上田 恵嗣

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経理部員 :当社は,普通株式への転換条項が付された優先株をこれまで転換権を行使することなく保有し続けていましたが,普通株式の株価が上昇してきたことから,当期中に転換権を行使して普通株式へ転換することを考えています。転換に際して,転換時の普通株式の時価と優先株の帳簿価額との差額をどのように扱えばよいのか迷っています。また,当社の連結子会社は,その同一銘柄株式を既に保有しています。
会計士 :それでは,転換条項が付されている優先株式の転換に関する会計処理について解説したいと思います。また,この機会に取得原価の簿価通算に関係する論点も整理しておきましょう。

(文中の意見にわたる部分は,筆者の私見であり,筆者の所属する法人の見解ではないことをあらかじめお断りします。)

Q1普通株式への転換条項が付された種類株式の転換時における会計処理

当社は,普通株式が上場されているA社が発行する甲種優先株式(種類株式)をその発行時に取得し,その他有価証券として保有(その他有価証券の評価差額については全部純資産直入法を採用)しています。甲種優先株式は,A社普通株式への転換条項が付されており,概要は次のとおりです。<甲種優...