シリーズ「学生と語る会計基準」 西川教授のポイントレッスン! 第8回 のれん

慶應義塾大学商学部 教授 西川郁生

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教授 今回はのれんを取り上げましょう。

木村太一君 前回の減損の議論の中で,非償却資産の減損については次回のテーマの中で,と仰っていたのでそんな気がしていました。先生は,以前(2015年1月)日本経済新聞の経済教室に,のれんの償却を支持する論稿を書かれていますね。

自己創設のれんと会計上ののれん

教授 そうですね。今日もそこはメーンテーマですが,慌てないで,まず,のれんとは何かを確認したいと思います。木村君はのれんをどう定義していますか?

木村君 私は,企業自身に内在する超過収益力と考えています。企業が競争力を有して将来的に継続して利益を生み出すことが期待されるのは,超過収益力があるからだと思います。

教授 どうして内在することになったのでしょう。

木村君 過去からの企業努力で培ったのだと思います。いわゆる自己創設のれんです。会計上は計上できないものですが。

教授内在するからといって,自己創設とは言い切れない時代ですが,M&A全盛の現在でも,日本企業の場合は自己創設のれんが圧倒的に多いでしょう。指摘通り,自己創設のれんは会計上どこにも出てこない。一方で企業結合では,のれんが計上されますから,会計関係の方の頭の中...