緊急特別座談会「不正を許さない社会構築に向けた課題」

~公認不正検査士のスキルから学ぶもの~

青山学院大学大学院 教授 八田 進二
山口利昭法律事務所 弁護士 山口 利昭
株式会社エスプラス 公認会計士 辻 さちえ
一般社団法人日本公認不正検査士協会 公認不正検査士 濱田 眞樹人

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東芝問題は,再び,企業不正の問題を政・官・民に考えさせる事件となった。27年度の下半期は,業界関係者・有識者らが会計監査の現状を分析し,既存の枠組みの中での改善策を模索する期間であった。金融庁の監査の在り方に関する懇談会や自民党が各々とりまとめた提言からは,会計監査人が置かれている状況の厳しさがうかがえる。そこでは,長らく力量不足が囁かれる会計士個人についても,「不正対応の技能習得」などが求められている。そこで本誌は不正問題に詳しい識者らに,東芝事件を軸に据えて「企業不正」の本質と問題の所在を議論していただいた(文中,話者を示す氏名は敬称略)。もちろん,会計士の問題とされる不正対応の力量向上のためのヒントにも触れている。いわれるままの対策に走るまえに,企業不正について本誌読者の皆さんと一緒に考えてみたい。

東芝事件のインパクト

八田 最初に東芝問題を振り返っていただきます。この問題は今後,企業の不正問題を語る時に避けては通れない,歴史に残る不祥事になってしまいました。東芝問題が提起した課題について本日お集まりいただいた皆さんの意見を聞かせてください。

濱田東芝といえば,「サザエさん」のスポンサ...