Q&Aコーナー 気になる論点(158) IFRSと米国基準(1)

‐金融商品会計に関する相違‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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米国財務会計基準審議会(FASB)が2016年1月5日に公表した会計基準更新書(ASU)第2016-01号「金融商品‐全般(Subtopic 825-10):金融資産及び金融負債の認識と測定」では,IFRS第9号「金融商品」と同様に,その他の包括利益(OCI)に計上した項目はリサイクリングしないのでしょうか。

A:

ASU第2016-01号では,株式や新株予約権などの資本性証券に対する投資について,IFRS第9号のようなOCIオプション(企業が任意に評価差額をOCIとすることができる会計処理)はありません。しかし,債券などの負債性証券に対する投資については,IAS第39号と同様の売却可能の区分において評価差額をOCIとし,また,公正価値(FV)オプションによる金融負債の信用リスクの変動分については,IFRS第9号と同様に,OCIとしており,いずれの場合もリサイクリングします。

<解説>

FASBにおける金融商品プロジェクト

2005年以降,FASBは,金融商品会計を改善し簡素化するために,IASBと共同で作業を続けていますが,次第に異なるアプローチとなってきています。

IASBは,2009年11月...