IFRSをめぐる動向 第85回 減損移行リソースグループでの議論(12月の議論)

PwCあらた監査法人 公認会計士 浅井 敬子

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1.はじめに

本連載は,主に国際会計基準審議会(IASB)の月次会議等での討議内容に基づき,IFRSをめぐる最新の動向を伝えることを目的としています。今回は,2015年12月の減損移行リソースグループ(以下,ITG)における議論の内容について解説します。なお,文中の意見にわたる部分は,筆者の私見であることをあらかじめお断りしておきます。

2.ITGの役割

IASBは,2014年7月,新たな減損に関する要求事項を含む最終版IFRS第9号を公表しました。IFRS第9号では,IAS第39号における発生信用損失モデルに代えて,予想信用損失モデルが導入されています。IASBは,この新しい予想信用損失モデルの導入を円滑に進めるための方策として,ITGを創設しました。ITGは,予想信用損失モデルの導入によって生じる実務上の諸問題について議論し,IASBに対してその内容を伝えることを目的としています。しかし,ITG自身がガイダンスを公表することはありません。必要に応じて,どのような対応をとるべきかを決定するのはIASBとなります。ITGは,2015年12月に3回目の会議を開催しました。

3.2015年12月の...