コーポレートガバナンス・コード~2年目の対応に向けて~ 第5回 最高経営責任者等の後継者計画 について

~中長期的な企業価値向上へのコミットメント~

PwCあらた監査法人 公認会計士 宇塚公一

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はじめに

我が国の上場企業に対して2015年6月1日より適用となったコーポレートガバナンス・コード(以下,コード)では,後継者の計画を前提とした取締役会の監督が補充原則4‐1③において示されている。

補充原則4‐1③
取締役会は,会社の目指すところ(経営理念等)や具体的な経営戦略を踏まえ,最高経営責任者等の後継者の計画(プランニング)について適切に監督を行うべきである。

この補充原則は,2016年1月20日付で東京証券取引所が公表した「コーポレートガバナンス・コードへの対応状況(2015年12月末時点)」に拠れば,ガバナンス報告書を提出した市場第一部および第二部の会社合計(1,858社)の86.1%(1,600社)が実施している。これの水準は他の原則・補充原則と比べると低い水準である(実施率の低さはコード73項目中12位)。

我が国のコードは,政府の成長戦略の中で成立したということもあり,「会社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上のために」企業活動が行われる際の指針という面が強調されているが,本稿では,このような企業活動のうちにあって,もっとも重要な活動の1つである最高経営責任者(CEO)等の...