世界の会計事務所から 第3回 マレーシア 「新会計基準のインパクトは税務・経営管理にも」

KPMG マレーシア事務所マネージャー 松元勝彦

( 28頁)

1.機能通貨の導入

会計帳簿をUSDで作成?

「ちょっと相談が...」

週末の午前,他のアセアン各国と同様,マレーシアでもご多聞にもれず駐在員同士でゴルフを行うのがお決まり行事となっている。グリーンミーティング後の昼食時に,クライアントから突然相談を受けることも,また,お決まり行事である。

「先日,貴社監査マネージャーの方から電話があって,来期から会計帳簿をUSDで作成する必要があるんじゃないかと伺いまして...」

「なるほど。機能通貨の件ですね,貴社の取引通貨は主にどのようになってますか?」

「販売と仕入は輸出入取引が大半なのでUSD建てで,人件費,その他の経費はMYR(マレーシアリンギット)建ての取引ですが,これはどう考えればいいですかね...」

この企業は,来期よりUSDで会計帳簿を作成することを決めた。マレーシアを製造拠点とする日系企業には,原材料調達のほとんどが輸入で,マレーシアで製造した完成品の大部分がアジア地域他の海外へ輸出され,仕入や売上の多くがUSD建てというケースがよくある。このような企業は,従来のMYRで会計記帳するよりも,輸入や輸出取引に実際に使用しているUSDで会計記帳する方が会社の経...