役員の報酬・賞与・慰労金の基本と実務Q&A<193> 会社役員賠償責任保険の保険料全額会社負担の解禁

 弁護士 小林 公明

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平成28年に新たな会社役員賠償責任保険の保険料の税務上の取扱いが公表されたとのことであるが,どこがどのように変更されたのか。

1 結論

平成28年2月24日に公表された「新たな会社役員賠償責任保険の保険料の税務上の取扱いについて(情報)」(国税庁ホームページよりその全文を末尾に掲載。以下「別紙(情報)」という)により,会社が会社役員賠償責任保険(以下「D&O保険」という)の保険料を全額負担しても,一定の場合には役員個人に対する給与課税を行わないことが明らかにされた(以下「新取扱い」という)。

2 従前の取扱い

(1)会社法の解釈

会社法上,D&O保険に関する規定はなく,敗訴により役員が賠償責任を負うことによって生ずる損害をてん補する保険の保険料を会社が負担することは違法ではないかとの学説に配慮し,従前のD&O保険の実務は,「保険契約者を株式会社,被保険者を役員とし,株式会社が保険料を支払い,役員が保険給付を受けるということを前提として,D&O保険契約を基本契約部分と株主代表訴訟担保特約部分とに分離した上(これにより,役員が株主代表訴訟で敗訴した場合には,基本契約部分で保険者は免責となり,特約部分...