有限責任 あずさ監査法人　企業成長支援本部　パートナー　栗栖孝彰

この物語は，企業の成長戦略としてM&Aを実行するにあたって必要となる知識や会計処理，実務上の対応等について，とある会社員（野口直大朗）の経験ストーリーを通じて解説するものである。なお，文中の意見に関する部分は筆者の私見である。 ＊　　　＊　　　＊

今回のターゲット候補は，未上場の精密機器メーカー（ミワ機械）に決まった。当社の成長戦略に沿った案件として，Ｍ＆Ａの仲介会社からの紹介案件だが，一心常務からは「今後のスケジュールと買値の目安，M&Aのための体制と予算案を決めておけ」と丸投げされた。

M&A関連の書籍を何冊か読み込んでみたが，まずはFA（ファイナンシャルアドバイザー）というものを選定して，アドバイスを受けながら進めるのが一般的なようだ。また，匠の事務所に行って相談してみるか。

野口 「いよいよ買収手続を進めることになったが， 社内と社外のプロジェクトチームをどのように構成すれば良いかで悩んでいるんだ（ ポイント１ ） 。社内は私が担当となって，経理・財務から１名ずつ集めようと考えているのだが」

匠「社内は，意思決定の質とスピードを上げるためにも案件責任者である役員とコミュニケーションを良く取れる人が...