Brexit(英国のEU離脱)にかかる現状と今後の影響

KPMG/あずさ監査法人 専務理事/Brexit EU対応専門チーム統轄責任者 三浦 洋
KPMG税理士法人 パートナー/Brexit EU対応専門チーム 神津 隆幸
KPMG税理士法人 シニアマネージャー/Brexit EU対応専門チーム 福田 隆

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1.はじめに‐Brexitの概要と当面の影響

6月23日の国民投票の結果である英国のEU離脱(以下Brexit)という予想外の決定に,英国内外の政府・企業・一般市民が混乱に陥る状況が続いていますが,本稿では今後予想される英国における短期的・中期的動きとそれらへの対応について,欧州大陸側の状況も踏まえて整理したいと思います。また,長期的変化には,離脱通知から2年後の離脱直後に始まるものと,EU同盟外で事業活動を行うことになって次第に判明するであろうより長期的な影響がありますので,後段で若干言及致します。

(1)英国の短期的動き:

英国では7月13日に予想より2カ月も早く新首相が誕生し,新内閣が組閣されました。テリーザ・メイ新首相は,先ずはBrexit以外の公約を,この新しい政治的かつ経済的に難しくなった環境の下でどのように国民に対して果たすかについて戦略を早期に立てることになるでしょう。そのため,税制に関する何らかの施策は,おそらく晩秋に通常発表される「Autumn Statement」といわれる次年度予算編成方針発表によるものと予想されるため,これ以前の税制改正は想定し難いといわれています。...