グループ会計の論点シリーズNo.6 パーチェス法から取得法へ(Ⅲ)

フジタ国際会計コンサルティング(株) 代表 藤田敬司

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はじめに:取得法における個別資産負債の公正価値

前回の当シリーズNo.5(本誌 No.3268 )では企業買収の対価,条件付き対価,非支配持分,段階取得に係る公正価値について検討した。今回は,まず取得法における個別資産負債の公正価値,次いでM&A取引に紛れ込みやすいその他取引の見分け方と測定期間(1年間)の活用方法を検討する。最終的にはパーチェス法から取得法への移行が"のれん金額の計算にどのような影響を及ぼすか"という視点からこのテーマを締め括る。結論を先にいえば,認識・測定の拡大・深化は"のれん金額を収縮させる方向へ"と働く。ここでは無形資産会計に踏み込まないが,たとえばトレードマーク,ドメインネーム,顧客リスト,受注残高など識別可能な無形資産はオフバランスであっても認識し支配取得日の公正価値を測定するからである。以下では,論点の多くインパクトが大きい仕掛り研究開発費とリストラ費用に絞って検討する。

1.仕掛り研究開発費 (In-Process R&D,IPRD)

企業結合会計基準以前の米国基準SFAS2(1974)では,研究費も開発費もすべて発生時に費用処理するものとされていた。その根拠は,...