世界の会計事務所から 第4回 タイ 「日系企業が適用する会計基準は?」

KPMG タイ事務所パートナー 三浦一郎
KPMG タイ事務所アシスタントマネジャー 山田知秀
KPMGジャパン ASEAN事業室タイデスクシニアマネジャー 星谷浩一

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"微笑みの国"と呼ばれるタイ。そのタイでは,「マイペンライ(=気にしない)」という言葉が家庭から職場まで,実に様々な場面で多用されている。タイを訪問する多くの日本人が覚える数少ないタイ語の一つであろう。この「マイペンライ」という言葉は,在タイ日本人の間でも頻繁に使われる。仕事中に困難に直面した際には「マイペンライ」と耐え,家庭で妻に怒られれば「マイペンライ」とつぶやき,ゴルフ場でミスした時には「マイペンライ」の一言で気分を変える。非常に便利な言葉である。

しかしながら,この「マイペンライ」という言葉には問題が生じた際に,短期的には事態を収束に向かわせる効果がある一方で,長期的には問題を先送りするという弊害を生むことがある。今回はマイペンライでは済まされない,日系企業に重要な影響を与えるであろう会計制度改正の動向をタイの会計事務所における実例からご紹介したい。

1.タイの会計制度の概要

「貴事務所との期末監査の打ち合わせの中で,非上場会社である我が社が適用する会計基準がいずれ変更されると聞いてから早2年が経ちますが,実際のところ現在我が社が適用しているのはどの会計基準なのでしょうか?」

現在タイ...