Q&Aコーナー 気になる論点(166) IASBにおける財務業績の議論(1)

-当期純利益の位置づけ-

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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国際会計基準審議会(IASB)では,概念フレームワークの見直しを行い,今後,包括利益を重視し,当期純利益をなくしてしまうのでしょうか。

A:

IASBでは,2016年6月開催のボード会議において,2015年5月公表の公開草案(ED)「財務報告に関する概念フレームワーク」と同様に,当期純利益は,その期間における企業の財務業績に関する主要な情報源であることを暫定決定しています。ただし,当期純利益の性格や内容については,相変わらず明確にしていません。

<解説>

IASBにおける概念フレームワークの見直し

IASBは,前身のIASCが1989年に公表した「財務諸表の作成及び表示に関するフレームワーク」を2001年に採用し,米国財務会計基準審議会(FASB)との共同プロジェクトにより,2010年には,その一部を改正しています。

その後,IASBとFASBは,他のプロジェクトに集中するために,共同の作業を休止しましたが,IASBは,「アジェンダ協議2011」を受けて,2012年に単独で議論を再開し,2013年7月にディスカッションペーパー(DP)「財務報告に関する概念フレームワークの見直し」を,2015年5...