日印社会保障協定について

KPMGインド アソシエイト・ディレクター 公認会計士,米国公認会計士 宮下 準二

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1.はじめに

2016年7月20日,「社会保障に関する日本国とインド共和国との間の協定」(以下,「日印社会保障協定」)効力発生のための外交上の公文の交換が行われ,2016年10月1日に発効する旨,外務省より発表がありました。

日印社会保障協定は,2012年11月16日に日印間で署名された後,2013年12月4日に日本の国会承認が得られていました。それ以降,インド国内の手続が進展しておりませんでしたが,2016年に入ってから,発効に向けた水面下での動きが活発になり,今般の発表となりました。

これにより,これまで問題となっていた社会保険料の二重払いが解消されることになり,日系企業にとってはインドビジネスを考える上で,また一つ,障害が解消されたことになります。

本稿では,インドにおける社会保障制度概要および日印社会保障協定発効による影響について,会計・監査,税務,企業運営の側面から検証します。なお,本文中の意見に関する部分については,筆者の私見であることをあらかじめお断りいたします。

2.インド社会保障制度概要

インドの社会保障制度は,大きく分類すると,いずれも確定拠出制度であるEmployees' P...