資産除去債務と減価償却
駒澤大学 教授 石川純治
現代会計のハイブリッド性
現代の会計をとりわけ伝統的な会計と比較するとき,1つの課題はその全体整合性,すなわち現代的な新基準と従来の基準との整合性を問うことだろう。仮にそこに何らかの矛盾があるなら,何が矛盾か,そしてその出所まで明らかにする必要がある。このことは,とりわけアカデミズムの仕事といえる。
本稿では,後述する現代会計のハイブリッド性(現代型と伝統型との異種併存性)という特徴をみるのに1つの格好の素材といえる資産除去債務(asset retirement obligations)の会計を取り上げる。そこでは何が矛盾か,さらにはその出所は何処かを探ることで,その基礎に横たわる現代会計のハイブリッド性,およびその矛盾と調整のあり方を解き明かしてみたい ① 。
周知のとおり,資産除去債務の全額計上(両建処理)では貸方の資産除去債務全額の適正開示が先で,それに伴い借方側の問題が浮上する。すなわち,貸方債務と同額の借方資産計上,そしてその減価償却の問題である。以下,いくつかの論点を示しながら議論してみたい。
将来支出がなぜ減価償却‐付随費用説の問題点
取得した資産の除去が法令や契約により法律上の義務と...
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