ハーフタイム 日銀バランスシートにみる貨幣の信用性

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金・銀・青銅のコインは紀元前600年ごろの古代ローマで使われ始めたと言われる。中央銀行が発行する貨幣にはそれ自体に価値がある金貨・銀貨もあったが,いまの紙幣は金と交換されない「信用貨幣」である。日銀の平成27年度末バランスシートをみると,借方の主な資産は国債349兆円,これに対応する貸方の主な負債は銀行券95兆円と当座預金232兆円。銀行券と当座預金を併せたベースマネーは国債を担保として供給され,不兌換紙幣である日銀券は日本政府の財政力と「信用」に依存しているように思われる。

因みにバジョット『ロンバート街』によって1869年当時のイングランド銀行のB/Sをみると,国債等15百万ポンド,金貨・金地金18百万ポンドの保有資産をバックに33百万ポンドの銀行券(金と交換可能な兌換券)を発行していた。「信用」とは即座に支払約束を履行する能力であるという定義に基づき,法律によって政府負債証券に対する銀行券発行は最大限15百万ポンドに制限し,それを上回る銀行券は金地金をもって担保としていた。いずれにせよヴィクトリア女王時代のイングランド銀行には,貨幣発行額には上限ルールがあり,大英帝国の金と盤石の政...