M&A物語 第4回 バリュエーション

有限責任 あずさ監査法人 企業成長支援本部 パートナー 栗栖孝彰
有限責任 あずさ監査法人 企業成長支援本部 パートナー 佐藤和充

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この物語は,企業の成長戦略としてM&Aを実行するにあたって必要となる知識や会計処理,実務上の対応等について,とある会社員(野口直大朗)の経験ストーリーを通じて解説するものである。なお,文中の意見に関する部分は筆者の私見である。

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野口の最近の悩みは,「買収ターゲットのミワ機械の価値はどれくらいなのだろう?」という,買収価格についての疑問だ。一心常務からも「早く目安を決めておけ!」と督促されているが,情報も少ない中でどのように決めたらよいのか,ほとほと困ってしまった。

「よし。困った時のタツキコンサルだな。」野口は高校時代にラグビー部で一緒だった同級生の匠(たくみ)が経営するM&Aコンサル会社を訪ねてみた。

野口 「買収価格はどうやって決めるのか,皆目分からなくて困っているんだ。」

「今日は随分と根源的で,難しい質問だな。まず,買収価格をどうして知りたいのか理由を教えてくれ。」

野口 「そんなのは当たり前じゃないか。できる限り安い値段でかつ,相手の納得する価格を提示しないといけないが,その決め方が分からないからだよ。」

匠「まあ,そんなに怒るなよ。ということは,現在はまだ相手方に価格提...