Q&Aコーナー 気になる論点(171) FASBにおける財務業績の議論(2)

‐OCIとリサイクリング‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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米国財務会計基準審議会(FASB)は,2016年8月4日に意見募集「アジェンダ協議」を公表し,トピックとして,その他の包括利益(OCI)とそのリサイクリングも含めているようです(コメント期限は2016年10月17日)。国際会計基準審議会(IASB)と異なり,FASBは,今後も,リサイクリングすると考えてよいのでしょうか。

A:

FASBのアジェンダ協議によれば,現在の米国基準では,その他の包括利益累計額(AOCI)に認識されたすべての利得・損失が,最終的には当期純利益に認識されるという考えがあり,また,当期純利益へのリサイクリングは,実現の結果として行われていることを示しています。そのうえで,これらには概念的な基礎がないとして,OCIやリサイクリングの見直しを示唆していますので,すべてのOCIを今後もリサイクリングするかどうかは,不透明です。

<解説>

FASBによるアジェンダ協議(1)‐公表の背景

FASBは,[図表1]で示しているように,近年,会計基準更新書(ASU)の公表により,議題(agenda)に掲げていた主要なプロジェクトの多くを完了したため,改善の可能性が高い主要な領域を検討し始め...