会計不正の構造【file10】工事原価の付替
・タイプ(不正の種類):管理職による原価付替 ・業種・業態:建設業 ・手法・手口:工事原価付替による費用先送り |
今回は,ある地方支店(A支店)における工事関係部門の部門長らの主導による工事原価付替の不正事例を取り上げる。当該不正では,主導者のみならず,下位の管理職を介在させて工事原価の付替が行われており,また,当該部門を管理する立場であるはずの副支店長までもが当該事実を黙認していた結果,4会計期間にわたり付替総額8億円超の不適切な処理が行われた。本社から遠隔地にある地方支店における営業所の会計不正に,いかに対応するべきかを検討したい。
1.会計不正の概要
(1)会社の状況
会社は,国内で住宅建築工事を中心に事業展開する中堅企業であり,創立80年を超える老舗企業である。
A支店は会社の基幹支店であったが,リーマンショック後,A地区の建設市況の著しい低迷により受注競争が激化,その対応のため安値受注を繰り返すものの,原価改善努力にも限界があり,赤字工事が増加するに至る。
(2)不正の動機および手口
こうした厳しい経営環境のなかでも各支店には目標利益が設定されており,A支店は会社の利益獲得の中核となる支店であっ...
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