Q&Aコーナー 気になる論点(172) IASBにおけるのれんの減損の議論

‐減損テストの見直し‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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国際会計基準審議会(IASB)では,のれんの減損テストの見直しを議論しているようです。どのような議論をしているのでしょうか。

A:

IASBでは,のれんの減損テストの1つとして,買収前余裕額(PH)アプローチが議論されています。これは,企業結合により取得したのれんは,企業結合のシナジーから便益を得ることが期待される取得企業の資金生成単位に配分されるため,認識されていない取得企業の自己創設のれんなどにより,取得したのれんの減損損失が適時に認識されないという懸念に対処する方法のようです。

<解説>

IASBにおけるのれんの減損の議論(1)‐進め方

IASBでは,2015年2月開催のボード会議において,IFRS第3号「企業結合」の適用後レビュー(PIR)による論点を議論し,以下をリサーチ・アジェンダとすることとしています。

(1) 事業の定義を明確化する方法

(2) IAS第36号「資産の減損」における減損テストを改善する方法

(3) のれんの事後の会計処理

(4) 顧客関係やブランド名などの無形資産の識別及び測定

このうち,(1)に関しては,2016年6月に,IFRS第3号を修正する公開草案を公表し,事業の定...