Q&Aコーナー 気になる論点(174) FASBにおける金融商品会計(2)

-ヘッジ会計-

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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米国財務会計基準審議会(FASB)が,2016年9月8日に公表した会計基準更新書(ASU)案「デリバティブとヘッジ(トピック815):ヘッジ活動の会計処理の限定的な改善」(2016年ASU案,コメント期限2016年11月22日)では,ヘッジ手段の利得・損失のうち非有効部分について,変更する提案をしているようです。これは,IFRS第9号「金融商品」と異なる処理になるのでしょうか。

A:

2016年ASU案では,IFRS第9号と異なり,キャッシュフロー(CF)ヘッジにおけるヘッジ手段の公正価値(FV)の変動は,有効部分と非有効部分に分割せずにその他の包括利益(OCI)とし,ヘッジ対象が当期純利益に影響を与えるときに,その損益計算書の項目と同じ項目に計上することを提案しています。

<解説>

FASBのヘッジ会計(1)‐経緯

FASBが1998年に公表した財務会計基準書(SFAS)第133号「デリバティブ商品およびヘッジ活動」では,ヘッジ関係にあるヘッジ対象やヘッジ手段について,通常の会計処理と異なるヘッジ会計を示しています。これは,2009年の体系化(codification)後,トピック815にお...