IFRSをめぐる動向 第93回 収益移行リソースグループでの議論(11月の議論)

PwCあらた有限責任監査法人 公認会計士 掛水 祐哉

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1.はじめに

本連載は,主に国際会計基準審議会(IASB)の月次会議等での討議内容に基づき,最新のIFRSをめぐる動向を伝えることを目的としています。今回は,収益認識移行リソースグループ(以下,TRG)での議論について取り上げます。

IASBは,米国財務会計基準審議会(FASB)と共同で新しい収益認識会計基準を開発し,2014年5月,国際財務報告基準第15号「顧客との契約から生じる収益」(以下,IFRS第15号)を公表しました。この基準は,2018年1月1日以後開始する事業年度から強制適用となります。また,FASBにおいても,同時期にIFRS第15号と文言レベルで概ね同一の基準であるASC Topic 606「顧客との契約から生じる収益」(以下,Topic 606)を公表しています。IASBとFASBは,この適用を円滑に進めるための方策として,合同でこのTRGを創設し,新たな収益認識会計基準の導入によって生じる実務上の諸問題についてメンバーの見解を共有し,両審議会に対してその内容を伝えることを目的として議論を行ってきました。

TRGでは,2014年7月に第1回目の会議が開催されて以降,201...