役員の報酬・賞与・慰労金の基本と実務Q&A<196> 取締役解任の正当な理由(1)

 弁護士 小林 公明

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取締役解任の「正当な理由」にはどんな類型があり,具体的にどのような状況にあれば認められるのか。

また,これが認められなかった場合とは具体的にどのような状況にあったのか。

1 結論

これまでの判例でその正当な理由の存在が認定された類型として五つ挙げることができ,その存否に関する具体的状況は以下に述べるとおりである。

2 解任には理由を要しない

会社は取締役と委任関係に立つ(330。委任者:会社,受任者:取締役)。

委任者はいつでも委任を解除することができる(民651Ⅰ)。

その結果,委任者たる会社は,株主総会の普通決議(累積投票により選任された取締役の解任の場合は特別決議,309Ⅱ⑦)により,任期中(最長10年,332Ⅱ),いつでも受任者たる取締役を解任することができる(339Ⅰ)。

この解任には理由を要しない。

理由の有無を問わず,前述の手続を踏めば有効となる。

実質的にも,会社(株主)の信を失った取締役に任期を全うさせることは,会社にとって好ましいことではない。

3 定款規定に注意

その解任手続の関係では定款規定を確認しておく必要がある。

京都地判平20.9.24 LLI/DB判例秘書L06350537判時2...