新春インタビュー ~道を切り拓く~ 世界一への財務戦略 日本電産 代表取締役会長兼社長 永守重信氏

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日本電産 代表取締役会長兼社長 永守重信
聞き手:慶應義塾大学 教授 西川郁生

<編集部より>

米経営誌ハーバード・ビジネス・レビューの「世界のCEOベスト100(The Best-Performing CEOs in the World)」に2年連続で選ばれた日本電産代表取締役会長兼社長の永守重信氏。財務パフォーマンスとESG(環境,社会,ガバナンス)を基に世界のCEOを格付けしているもので,永守氏は最新の2016年版で日本人最高位にランキングされている。

本誌では,慶應義塾大学教授の西川郁生氏のご助力を得て,インタビューを行った(2016年12月1日)。前半では草創期の奮闘を振り返りながら,後に続くベンチャー企業へのメッセージを,後半ではM&A戦略,グローバル展開と事業管理,CFOの役割の重要性など財務戦略と経営哲学を聞いた。

世界のトップ企業に成長させた永守経営の根底には緻密な財務戦略があった。

永守経営を支える財務戦略

西川氏 永守さんの経営に関しては,「元日以外は休まない」という伝説や,「3Q6S」 ,「情熱,熱意,執念」,「すぐやる,必ずやる,出来るまでやる」といったスローガン,「3大経営手法:井戸掘り経営,家計簿経営,千切り経営」など,有名なフレーズに事欠かないのですけれども,永守経営を支えるものとして,緻密な財務戦略があると私は考えております。本日は,本誌『経営財務』の読者に向け,経理財務を中心に据えてお話を伺いたいと思います。

いまから30年前に上梓された『技術ベンチャー社長が書いた 体あたり財務戦略』(1986年刊)を含め,改めて永守さんの財務に関する考え方を読ませていただきました。学生時代に株式投資を経験され,そのときにバランスシートが読めるようになったと伺っております。バランスシートを一日見ていても飽きないそうですが,今でも上場他社のバランスシートをご覧になることはありますか。

永守氏 それはもう,常に見ています。競争相手を見ているでしょう。それから,決算発表がある度に地元の会社は全て見ています。それこそ,「バランスシートの見方」という本を書こうと思っているくらいです(笑)。

西川氏 その度にいろいろなことをお感じになられるということですね。

ベンチャー企業に向けて

「起業から草創期には"絶対に会社を潰さない財務戦略"を」

西川氏日本電産がベンチャービジネスであった時代,「...