書評 有限責任監査法人トーマツ監訳『国際財務報告基準(IFRS)詳説 iGAAP2016』

(第一法規社刊/第1巻16,000円+税,第2・3巻各14,000円+税)

関西学院大学 名誉教授 平松一夫

( 31頁)

2010年にわが国でIFRSの任意適用が始まって以来,わが国のIFRS適用済・適用決定会社数は着実に増加し,2016年11月現在125社に達している。一方,世界では130を超える国・地域でIFRSが要求または許容されている。いまやIFRSは世界共通の会計言語になっていると言って過言でなく,わが国でもその重要性が広く認識されている。

ところが,IFRSの適用を巡っては,適用企業の経理担当者,監査を担う公認会計士,将来IFRSに関わる職業に従事しようと考えている関係者にとって超えなければならない大きな「壁」がそびえている。壁の原因として,IFRS本体とその関連文書がきわめて大部になってきていることやIFRSが原則主義の考え方に基づいて設定されていることなどから,IFRSを理解することが容易でないことが挙げられる。そのためIFRSに関する適切な解説書がどうしても必要となる。

こうした要望に応えるため実に多くの解説書が出版されてきた。大規模な書店では特設コーナーが設けられIFRS関連書籍が所狭しと並べられている。ただ,その多くはIFRSの概要を解説するものであり,細部にわたる実務等の要請に応えられ...