インドにおける統一間接税(GST)へのコンプライアンス対応

‐ITシステムへの影響‐

KPMGインド デリー事務所 公認会計士・米国公認会計士 宮下 準二
KPMGインド バンガロール事務所 ITアドバイザリー 田村 暢大

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1.はじめに

2016年8月3日,憲法修正案がインド国会上院を全会一致で通過,10年超の歳月を経て,新たな間接税スキームである,GST(Goods and Services Tax)の導入が確実となりました。インドでは国税,州税合わせて数多くの間接税が存在する上,物品(Goods)とサービス(Services)で異なる税法が適用されています。このため,新たな税法はGoods and Services Taxと呼ばれ,日本語では「統一間接税」と一般的に紹介されています。

GST導入のために必要となる憲法修正案の国会通過時においては,ジャイトリー財務大臣は「歴史的な大改革」と呼んでいましたが,背景には,複数の間接税法に対するコンプライアンスが必要であったり,仕入税額控除が取れずに最終的に企業のコストになってしまう間接税も多く存在することなど,既存の間接税スキームが大変複雑で,多くの課題が存在していることが挙げられます。このため,これら諸課題を一掃する可能性があるGSTは,企業活動を活性化し,GDPは増加,さらなる海外直接投資が見込めるなど,より一層の経済成長を促すための切り札的存在として位置づ...