M&A物語 第8回 クロスボーダーM&A

有限責任 あずさ監査法人 企業成長支援本部 パートナー 栗栖 孝彰
有限責任 あずさ監査法人 企業成長支援本部 パートナー 佐藤 義仁
有限責任 あずさ監査法人 アカウンティング・アドバイザリー・サービス事業部 パートナー 伊巻 寛幸

( 46頁)
この物語は,企業の成長戦略としてM&Aを実行するにあたって必要となる知識や会計処理,実務上の対応等について,とある会社員(野口直大朗)の経験ストーリーを通じて解説するものである。なお,文中の意見に関する部分は筆者の私見である。

*   *   *

野口は「ふーっ」とため息をつき,ほっと胸を撫でおろした。たった今,ミワ機械との間の株式譲渡契約の調印が無事に終わったところである。4月に経営企画室に配属された後,野口にとって最初のM&Aであったが,終わってみればあっという間だった。今夜はプロジェクトチームでお祝い会だが,その前にお世話になったコンサルの匠にお礼の報告に行くこととした。

野口 「お陰様で今日,無事に調印式が終了して一段落ついたところなんだ。匠には色々と教えてもらって本当に感謝しているよ。」

匠「それは良かったね。野口には初めてのM&Aだったから大変だったと思うが,ラグビー部仕込みの負けん気でよく乗り切ったよ。お疲れ様!だが,安心してはいけないよ。M&Aの成否はこれからが一番重要なんだ。クロージング後に始まるミワ機械との統合作業が成功して初めてM&Aが成功したと言えるのだからね。結婚と一緒...