新春特別寄稿 上場制度に関する動向~2016年を振り返って~

東京証券取引所 執行役員上場部長 青 克美

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1.はじめに

2016年は,健全な新規株式公開(以下「IPO」という。)の推進やコーポレートガバナンス・コード(以下「ガバナンスコード」という。)の普及促進など,近年の課題への取組みを着実に進めた一年となった。IPOに関しては,2015年3月に公表した新規公開の問題点への対応に継続して取り組んでおり,一定の効果があったものと考えている。コーポレート・ガバナンスの充実に向けては,2015年6月に適用を開始したガバナンスコードの定着に向けた取組みに注力した。開示に関しては,金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループの提言を踏まえ,決算短信を,速報性に着目した記載内容とするよう検討を進めているところである。また,IFRSの任意適用の拡大や売買単位の統一も着実に進んでいる。その他にも,上場会社の企業価値向上経営の推進に向けた取組みも継続して行った。

本稿では,昨年1年間の上場制度を巡る動向を振り返るとともに,2017年に向けた課題をご紹介したい。

2.IPOを巡る動向

新規上場会社の社数をみると,2009年は年間19社と低迷していたが,2010年以降は2015年まで6年連続で増加してきた。20...