新春特別寄稿 企業会計の課題と監査の信頼回復

一般社団法人日本経済団体連合会 参与 阿部泰久

( 38頁)

1.はじめに

新年明けましておめでとうございます。

昨年は,企業会計制度については比較的穏やかな年でありましたが,一昨年来の東芝問題をはじめとする不祥事を受けて監査や監査法人のあり方をめぐって様々な議論が続き,ある意味大きな転機となった年ではないかと考えます。

そこで本稿では,国内外の企業会計にかかわる課題を中心に,監査の適正化,監査法人のあり方,さらにはコーポレートガバナンスの課題にも触れながら,昨年の総括と今年の展望を描いてみたいと思います。

2.IFRS‐任意適用拡大と基準作成への我が国の関わり

日本取引所グループによれば,2016年12月15日時点でIFRS適用済み会社は101社,適用を決定している会社は25社であり,これら126社の時価総額は全上場企業時価総額の2割を超えています。このほか,東京証券取引所の「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の開示内容の分析(2016年7月22日)によれば,IFRSの任意適用を検討している企業は200社以上になります。

業種別に見れば,国際競争に直面している業種と,そうでない業種,あるいはわが国独自の規制体系に置かれている業種によりはっきりと分かれて...