座談会 第三者委員会報告書の社会的意義と今後の課題<前編>

~過去の事例から何を学ぶか

日比谷パーク法律事務所 弁護士 久保利 英明
東京霞ヶ関法律事務所 弁護士 遠藤 元一
プロアクト法律事務所 弁護士 竹内 朗
青山学院大学大学院 教授 八田 進二(司会)

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近年,「不祥事発覚」と「第三者委員会設置」の組み合わせは,企業がとる対応手続きとして一般化している。そして,第三者委員会が作成する報告書をもって一段落を着けるというのが見慣れた一連の流れになってきた。しかし,これまでに公表された第三者委員会報告書に関しては,委員会の構成員の適格性や調査範囲,調査内容に問題のあるもの,さらには原因究明が不十分なものなどが散見される。第三者委員会の活動や,その報告書の信頼性をより高めるためにどうすればいいのか。そこで本誌は,第三者委員会報告書の評価や研究,あるいは自身が委員を務めた経験もある専門家の方々に,過去事例の検証と今後の課題,あるべき第三者委員会(報告書)の形などを議論していただいた。

第三者委員会の実態

八田 企業で不祥事が起きると,多くは「第三者委員会」を設置して,そこが事実の検証や原因究明,そして再発防止等に関する報告書を作成し,企業がそれを受領・公表するというのが最近の傾向になっています。ただし,残念ながら,報告書の内容や社会的な信頼性という面ではそれぞれに差があります。そんなこともあり,2014年に久保利先生を委員長として,弁護士,学者らがボランテリーな形で「第三者委員会報告書格付け委員会」を立ち上げ,四半期ごとに社会的に影響力のある報告書の格付けをしてきています。本日は,この格付け委員会のメンバーに加え,第三者委員会報告書に強い関心をお持ちの遠藤先生を交えて「第三者委員会報告書の社会的意義と今後の課題」をテーマに議論したいと思います。第三者委員会の設置というのは,ここ10年ぐらいの動きだと思いますが,過去の経緯や現状など,その実態について簡単に竹内先生の方から紹介していただけますか。

竹内 第三者委員会や調査委員会といったものをピックアップした一覧表を掲載しているWebサイト「第三者委員会ドットコム」 があります。

一つのデータとして参考になると思いますが,2012年以降の掲載総件数79件のうち,会計不正と思われるものを抽出すると46件になり,半分以上が会計不正ということです。このサイトに掲載されている上場会社以外にも,例えば学校など教育機関,あるいはスポーツ競技団体,行政機関などのさまざまな組織・団体における問題で第三者委員会が設置されているので,実社会にはかなり普及しているとみています。

八田少し古いですが,私も2012年頃に...