会計不正の構造【file11】適切な売上計上基準とは

( 42頁)

・タイプ(不適切事例):前倒売上計上

・業種・業態:設備設置販売業

・手法・手口:不適切な根拠による収益計上

今回は,ある新規上場会社の不適切とされた収益認識を取り上げる。証憑の存在とは別途,取引の実態を把握し,その実態に対応する,あるべき会計処理はいかなるものか,また,監査上の留意点について検討したい。

1.不適切とされた会計処理の概要

(1)会社の状況

会社は,設立後,比較的短期間に新興市場に上場を果たした成長企業である。会社は,設立の数年後に,主に個人向けに特定の設備を設置し販売する事業を開始した。

当該事業に係る販売業務の基本的な流れは,①事業にかかる研修会の開催,②研修会参加者等からの申し込み,③申込者が金融機関から融資を受けて購入する場合,金融機関による与信審査結果の入手(申込者についての設備代金の支払能力の確認),④設備工事注文書の受領,⑤契約書作成,⑥設備の施工,⑦設備の竣工及び申込者への引渡し,⑧設備の稼動,と続く。

会社は,基本的には,上記⑦の段階で収益認識を行うこととし,具体的な証憑については,設備の竣工時には施工完了報告書を発行し,申込者への引渡しに対応して設備受領書を入手する...