IFRSをめぐる動向 第95回 適用後レビューから生じたIFRS第8号「事業セグメント」の明確化(2016年10月の議論)

PwCあらた有限責任監査法人 米国公認会計士 小柳 千佳子

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1.はじめに

本連載は,主に国際会計基準審議会(IASB)及び米国財務会計基準審議会(FASB)の月次合同会議等での討議内容に基づき,IFRSをめぐる最新の動向を伝えることを目的としています。

今回は,適用後レビューから生じたIFRS第8号「事業セグメント」の明確化について,プロジェクトの経緯を振り返るとともに,2016年10月のIASB会議での議論の内容について解説します。なお,文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめお断りしておきます。

2.プロジェクトの経緯

IASBは,IFRS第8号の適用後レビュー(Post-implementation review)を実施し,2013年7月に適用後レビューの実施結果に関する報告書およびフィードバック・ステートメントを公表しました。フィードバック・ステートメントでは,潜在的に改善または修正が必要な項目として6つの領域が識別されています。これら領域について,IASBのスタッフが追加の調査を実施し,その結果が2015年5月のIASB会議において示されました。審議の結果,5つの領域について,計7項目の修正を行うことが仮決定されました(図表1...