世界のIFRS適用事例 Case1 お値段4兆円の無形資産

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IFRSが2005年に欧州で強制適用されてから10年が経過し,わが国でも任意適用企業数(適用決定会社を含む)が2017年3月現在で,141社となりました(東証調べ)。この連載では,欧州の上場企業を中心に興味深い開示例を紹介しつつ,IFRSやわが国の会計上の論点や問題点等も適宜,取り上げます。

なお,本稿で紹介する外国企業の開示は,各社の直近のアニュアルレポートの注記(抜粋を含む)を和訳・要約したものです。

ソフトバンクが計上する巨額の無形資産とは

近年は特に,のれんや商標権,ブランド等の無形資産の重要性や,金額的な比重が高まっていると言われますが,今回は取得価額が4兆円という「超高額な」無形資産を紹介します。

4兆円もする無形資産は,FCCライセンスです。FCCとは,Federal Communications Commissionの略で,米国の連邦通信委員会を指します。FCCが発行する通信ライセンスの中には,米国の無線愛好家が個人で試験を受験し,取得するようなものもありますが,わが国のソフトバンクが無形資産として計上しているFCCライセンスの対価は,2016年3月31日現在で何と4兆607億...