【投資家が求める開示】企業分析の視点からみたIFRS財務諸表 第1回 「Operatingか,Investmentか?」

―投資家にとってOperatingであるかどうかは何故重要か―

株式会社野村総合研究所 上級研究員 三井 千絵

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1.はじめに

国際的には,IFRSを巡る議論はすでに「導入の是非」から「運用の改善」へと移っている。IASBは現在,基本財務諸表の改善を検討するプロジェクトを行っている。これは昨年完了した2015年アジェンダ・コンサルテーションの後,世界中の投資家から寄せられた「IFRS財務諸表は使いづらい」との意見を受けてはじまったものであり,指摘の多かった,PL上に何らかの段階利益の開示(IFRS基準では"表示"と記される)を義務付ける是非の検討から取り組んでいる。他にもディスクロージャー・イニシアティブ(DI)など,投資家の声を反映させるいくつかのプロジェクトがあり,全体として「ベター・コミュニケーション」というテーマのもとで進められている。本連載では,これらのプロジェクトに関して,国内外において投資家が指摘するIFRS財務諸表の検討課題と議論の状況を紹介していく。今回は投資家がなぜ"Operating"を重視するかという問題を扱う。

2.論点に係るIFRS財表の現状

IFRS基準では,必要に応じて段階利益をPL上表示することを求めているものの,「Operating profit」等がどのような利益で...