Q&Aコーナー 気になる論点(189) IASBにおける開示原則の検討(2)

‐対象となる報告書‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

( 30頁)

 国際会計基準審議会(IASB)が,2017年3月30日に公表したディスカッション・ペーパー「開示に関する取組み‐開示原則」(開示原則DP)では,財務報告書全体の開示を検討しているのでしょうか。

A:

開示原則DPでは,認識している開示問題に対する予備的見解などについて,市場関係者からの意見を求め,これにより,財務報告書全体ではなく,財務諸表の開示をカバーしているIAS第1号「財務諸表の表示」の修正か,それを置き換える一般開示基準の開発を検討しています。ただし,一定の要件を満たした場合に,財務諸表外でIFRSに従った情報を提供できるとすることをIASBの予備的見解としています。

<解説>

財務報告書と財務諸表

IASBが2010年9月に改正した「財務報告に関する概念フレームワーク」において,財務報告(financial reporting)の目的は,現在及び潜在的な投資者,融資者及び他の債権者が企業への資源の提供に関する意思決定を行う際に有用な,報告企業についての財務情報を提供することであるとしています(OB1項)。

その財務情報は,財務報告書(financial reports)によって提供さ...