書評 杉本 徳栄 著『国際会計の実像』~会計基準のコンバージェンスとIFRSsアドプション

(同文舘出版刊/本体13,000円+税)

国際会計基準審議会(IASB) 理事 鶯地 隆継

( 34頁)

会計に係る仕事をする人にとって,会計基準やその周辺制度がどのような経緯を経て現在の形に至ったのかをしっかりと理解することは大変重要である。なぜならば,会計制度はその時々の経済環境や政治環境の影響を受けながら,絶え間ない試行錯誤の上に成り立った社会的合意であるからだ。したがい,単に現在の基準や制度を読むだけでは基準や制度の真意を理解することが出来ない。会計に関して言えば,国際化の流れは止められない。経済活動の国際化が進み続ける中での必然である。そのような環境の下,国際会計の成り立ちや発展の経緯をしっかりと体系的に整理して理解することは,これからの制度変更やその発展を予測する上において大変有益である。

本書は現在の国際会計の仕組みがどのような経緯を経て成り立ち,現在の仕組みに至ったのかを,体系的かつ網羅的に整理した最も詳しい文献であると言ってよいと思う。IFRS(国際財務報告基準)の成立過程を解説した文献は数多くある。また日本の会計制度の歴史を紐解いた書物もたくさんある。しかし,本書はこれまであった解説本の範疇を大きく超えている。本書は会計基準というものを,国際経済,国際政治という大きな枠組...