ハーフタイム 統計は偶然を飼いならせるか

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トランプ大統領は「パリ協定が参加国で全面履行されても2100年までに0.2℃しか下がらない」と言ってパリ協定からの離脱を宣言した。その直後,この試算を公表したマサチューセッツ工科大学の研究者らは「何もしなければ5℃以上上昇する可能性がある」と反論した(6月4日付け日本経済新聞)。

政治に好都合な予測はつまみ食いする一方,不都合な予測は無視する。これがトランプ流かも知れない。しかし統計の手法や数字の解釈方法にも,トランプ流ほど極端ではないが,かなり融通無碍なデータ分析によって何も存在しないところに相関関係を発見するとか,カネのために主張したいことを主張することを可能にするわなが多数仕掛けられている。

元々統計は世界から気まぐれを減らし,混沌から秩序を生み出すために,いわば偶然を飼いならして法則化するために19世紀に誕生した技術である。今では様々な人間社会の課題を解決するには統計学が有力な武器になる(西内啓『統計学が最強の学問である』)。

たしかに,人間が統制できる世界が広がり,日々の健康に係わるところでは新薬や医療,ビジネスではマーケティング手法などの効果検証でも統計が使われている。

問題は,デ...