世界の会計事務所から 第14回 ハンガリー

個人所得税と社会保障負担

KPMGハンガリー事務所 マネジャー 長竹 純一

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1.個人所得税

◆個人所得税ルールに関する誤解

ハンガリーの首都ブダペストでは,7月末から9月初旬にかけて,世界水泳・F1グランプリ・世界柔道と,ビッグイベントが次々に開催された。在ハンガリー日本国大使館の統計によれば,ブダペストに在住している日本人は1,000人を少し超えるくらいであるが,このようなイベントを背景に,街中で見かける日本人も例年より多いように感じる。

「駐在員の個人所得税について教えてください」

最近このような相談を受けることが多くなった。このような相談の背景は,当局による税務調査で調査官から質問を受けた場合であったり,経理部門担当者の交代に伴って各種手続を見直している中に発覚する場合など,各企業によって様々である。

「ハンガリーの税法上は,例えば駐在員の家族に対して日本で支給される所得も課税対象となります。さらに,それらの所得は四半期ごとの予定納税の対象となります。これまではどのようにされていましたか?」

「えっ,そうなんですか?これまでは確定申告の際にまとめて納税していました」

日本人駐在員の個人所得税は,後述のように四半期ごとの納税が必要であったり,各種手当の取り扱いが現地従業...