私の会計史 theme4 1970年代の英国社会と欧州勤務6年の総括

  藤田敬司

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英国の伝統と旧弊,開放社会と福祉国家

1)ロンドン郊外のアパートに落ち着くとまず隣家に手土産をもって挨拶に行く。いかにも教養がありそうな老夫婦に招じ入れられ,しばし懇談したあとに手渡されたのは,何と分厚いシェクスピア劇の名セリフ集だった。

2)団地のすぐ裏手にはコモンズ(自然のままの入会地)と広大なリッチモンド公園がある。その公園の中にはゴルフのパブリックコースが2面あり,使用料はなんと50ペンスだった。公園の入り口付近の高台からはW・ターナーが描いた,テームズ河を見下ろす風景が眺められる。駅の反対側にはキュー・ガーデンがあり入場料はタダだった(今は約2.5千円)。

3)団地の隣にあるパブに入ると,有産階級用と労働者用のコーナーに間仕切りされていた。お好きな方へどうぞと言われたが,旧階級社会の残滓を見た。

4)通勤用の電車車両は老朽化してガタガタ。国鉄ブリティッシュレールのストは頻発。伝統的成熟社会の「安定性」は「競争と改革」に背を向け「非効率」と隣り合わせだった。

5)住民登録済みの外国人にも市会議員選挙の投票用紙が配布されてきた。さすがは近代民主主義の母国だと思った。

6)子供が熱を出しても電...