【投資家が求める開示】企業分析の視点からみたIFRS財務諸表 第2回 M&Aの開示と企業のガバナンス

株式会社野村総合研究所 上級研究員 三井 千絵

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筆者は投資家等の情報利用者が自主的に集まり,IFRSの財務諸表の課題について議論するワークショップをIFRS財団アジアオセアニアオフィスをお借りして,年3~4回のペースで主催している。このワークショップは,特定の資格や特定の業種に属するメンバーだけの集まりではないという点が特徴で,元々は3年前,投資家,情報ベンダーを中心に,当時まだ事例も少ないIFRS財務諸表の読み方を一緒に学ぶ場として始めたが,現在は会計士や企業の経理といったバックグラウンドの参加者もあり,議論の幅が広がった。題材は参加者が持ち寄る実際の開示事例であり,これを起点にIFRSの開示の問題を議論している(2017年5月発行の 3311号 でも紹介した)。

IASBが昨年頃から,"ベターコミュニケーション"というテーマを掲げ,投資家等情報利用者の声を積極的に聞き始めたこともあって,このワークショップでは毎回IASBを招待し,事例に基づく議論から得られた意見をIASBとも共有している。

今年5月末に行われた会合では,M&Aの開示について議論を行った。本稿では,そこでどのような意見が交わされたのかを紹介したい。

1.M&Aに関する開示へ...