収益認識基準公開草案の検討 財務諸表作成者の問題意識と実務対応 File05 情報サービス産業協会

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企業会計基準委員会(ASBJ)が7月20日に公表した企業会計基準公開草案第61号「収益認識に関する会計基準(案)」等の内容について,財務諸表作成者に話を聞く本シリーズ。昨年の意見募集時には多数の論点をとりあげて課題や疑問を提示した情報サービス産業協会。意見書で同協会は,IFRS15号を我が国で適用した場合に想定される論点には「企業実務から乖離しているものがある」と指摘していた。公開草案は基本的にIFRS15号の規定を受け入れる形で開発されたものになったが,IT業界はその内容をどうみているのか。本誌は同協会に質問書を送付し,11月1日に同協会生産性・収益力向上委員会・財務税制部会から文書で回答を得た。

1.公開草案について

――昨年の意見募集時に提出された意見書の内容を踏まえて,公開草案について全体的な評価をお聞かせください。

当部会が昨年提出した意見では,意見募集文書が論理的な妥当性,整合性を重視するあまり,企業の意思決定や活動の実態等から乖離している旨を指摘しましたが,本公開草案では,収益認識に関する会計基準の適用指針(案)(以下,適用指針案)において「重要性等に関する代替的な取扱い」が設けられており,上記の問題を解消する有効策として評価しています。

また,意見募集文書に対しては,引当金の取扱いの明確化も要望しましたが,これについても適用指針案において「工事契約等から損失が見込まれる場合の取扱い」が設けられており,現行の「工事契約に関する会計基準」(以下,現行基準)における会計処理との整合性が図られていると評価しています。

他方,意見募集文書で示されたソフトウェア開発取引の例示等が脱落しているのは残念です。

――公開草案の内容や規定(文章)は企業の実務家にとって理解しやすいものになっていますか。草案は英文の翻訳・組替えであるため,日本語としての可読性が懸念されています。

公開草案の内容・規定の日本語としての可読性は問題ありません。IFRS第15号の日本語版(会計基準委員会監訳版)では,訳文(特に設例)の理解が難しいと感じられる箇所もありましたが,既に昨年の意見募集文書でも,理解が容易な説明となっていました。

2.業界特有の論点

①懸念項目への対応

――疑問として提出された意見への対応(草案の内容)を見て,業界として特に強い懸念をもっていた項目を教えてください。また,提出した意見が反映...