書評 小津 稚加子 編著『IFRS適用のエフェクト研究』

(中央経済社刊/本体4,400円+税)

前企業会計基準委員会委員長  西川 郁生

( 36頁)

評者は,以前,本書の編著者グループの研究会で,ASBJの会計基準開発活動について講演を行った。参加者から金融危機時の設定主体の対応など数多くの質問を受けた記憶がある。本書は,そのグループの研究成果である12篇の論文からなる。

IFRS公表のデュー・プロセスに組込まれたeffect analysisには,「影響分析」という定訳がある。しかし,本書は「エフェクト研究」というユニークな表題を付す。ここには「影響」を,より広く捉えるというグループの意図があるのだろう。

本書は,序章,第1編「概念・理論研究」(第1章から第4章),第2編「IFRS適用の効果・影響分析」(第5章から第12章)からなる。

本書の全体像を示す序章(小津)に続き,第1編第1章(潮崎)はエフェクト概念をコスト・ベネフィットとの比較をしつつ整理する。第2章(山田)は「IASBの正当性」からその活動を考察する。第3章(岡田)はIFRSと会計の機能(情報提供と利害調整)について試論を述べ,第4章(辻川)はIFRSの適用後レビューにおける学術研究について論じている。

第2編は,前半の第5章から第9章までがIFRS早期適用国の事後評価分析で...