私の会計史 theme10 ドイツ勤務(その1)

  藤田敬司

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ドイツ勤務を希望する

機械経理部勤務も4年になった1987年,思い切ってドイツ勤務を希望した。年齢からみて海外勤務のラスト・チャンスになると思ったのである。大学では第2外国語としてドイツ語を学び,入社早々には社内検定試験で一級を取っていたから,ドイツとドイツ語には元々親しみが深かったが,40代も半ばを過ぎた頃のドイツ語はすっかり錆ついていた。幸い転勤前語学研修制度を利用し,ハンザ都市ブレーメンのゲーテ・インスティトゥートで夏の2か月間コースに参加できた。

外国語も水泳も昔覚えたものは,年をとってから再びやってみると思い出すものだが,男性・中性・女性の名詞と文章の中で使われるその主格・所有格・2つの目的格によって使い分ける定冠詞,時制によって変わる動詞の語尾にはやはり閉口した。同級生には日本・韓国から来た大学教師もいたが,ほとんどは米国・フランスなどからの若い学生だったから,実務に復帰できる日が待ち遠しく思えたこともある。

このドイツ語学校は,ドイツ語を教えるだけでなく,外国人に素顔のドイツを知ってもらうよう努めていた。ベンツの自動車工場見学や東西ベルリンへの旅行を企画してくれた。西から東への...