Q&Aコーナー 気になる論点(206) 取得した資産グループの当初測定

‐IFRS解釈指針委員会のアジェンダ決定‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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IFRS解釈指針委員会(IFRS-IC)は,2017年11月29日に,事業を構成しない資産グループが,原価と原価以外の金額の両方で当初測定される識別可能な資産・負債を含んでおり,それらの個々の公正価値の合計が取引価格と異なっている場合の取得時の会計処理について,基準設定アジェンダに追加しないことを決定しています。当該取引においては,取得時に損益を計上するのでしょうか。

A:

このアジェンダ決定によれば,IFRS第3号「企業結合」の解釈により,取得時に損益を計上する場合もしない場合もあると思われます。

<解説>

取得した資産グループの当初測定(1)‐問題の所在

IFRS第3号では,事業の取得と事業を構成しない資産グループの取得の会計処理は,のれん又は割安購入益(以下「のれん等」)の認識などにおいて異なるとしています([図表1])。

[図表1]

会計処理事業の取得事業を構成しない資産グループの取得認識可能な資産・負債の測定とのれん等の認識識別可能な資産・負債を,取得日の公正価値で測定し(18‐31項)①,のれん等を認識する(32項)。取得原価を,取得日の公正価値に基づいて認識可能な資産・負債に配分し,の...