IFRSをめぐる動向 第102回 IAS第37号「引当金,偶発債務及び偶発資産」-契約が不利であるか否かを評価する際に考慮されるコスト

PwCあらた有限責任監査法人 公認会計士 掛水 祐哉

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1.はじめに

本連載は,主に国際会計基準審議会(IASB)の月次会議等での討議内容に基づき,最新のIFRSをめぐる動向を伝えることを目的としています。そこで,今回は,2017年6月から,IFRS解釈指針委員会(以下,IFRIC)およびIASBで議論されている,IAS第37号「引当金,偶発債務及び偶発資産」(以下「IAS第37号」という。)-契約が不利であるか否かを評価する際に考慮されるコストについて取り上げます。

2017年11月までに行われた議論の結果,IFRICはIAS第37号の不利な契約の定義における「不可避的なコスト」という用語の意味を明確化するプロジェクトを基準設定のアジェンダに追加することを決定しており,当該決定に至る過程について説明します。

なお,文中の意見にわたる部分は,筆者の私見であることをあらかじめお断りしておきます。

2.背景

IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」(以下「IFRS第15号」という。)の公表により,IAS第11号「工事契約」(以下「IAS第11号」という。)が廃止されることとなります。IAS第11号においては,不利な契約による負債について会計処理の要...