私の会計史 theme14 最後の経理部勤務(その3)

未認識資産負債のオンバランス化

  藤田敬司

( 44頁)

最後の経理部勤務中に新設または改正された6つの会計基準のうち,前回(本誌 No.3341 「theme 13」参照)に引き続き今回は表中3)項から6)項について,企業会計審議会幹事としての議論や実務上の経験,いまも残る課題などについて触れておきたい。

3) 項:研究開発費及びソフトウェア会計基準の新設

経営学でいう経営資源とはヒト・モノ・カネ・情報である。そのうち最も重要なものはヒトと情報であるが,いずれもB/S上で無形資産として報告されることはない。通常,日本基準の個別B/S上で報告される無形固定資産は,特許権・商標権・意匠権・鉱業権・地上権・漁業権など法的に保護されている権利と,当基準によって新たに規定されたソフトウェアに限られ,開発費や試験研究費等は繰延資産として報告される。いずれも企業会計原則に基づいて計上され,税法基準に照らして償却処理される。わが国にはSFAS142やIAS38のような包括的基準がいまだ存在しないからである。

当基準は通常「研究開発費等会計基準」と呼ばれるが,研究開発費はすべて発生時に費用処理されるから,ソフトウェア開発費のうち資産化できるのは請負と販売目的関連費用の...