インタビュー 監査の信頼性向上のために~「監査報告書の透明化」や「会計不正と監査」の観点から

( 20頁)
甲南大学   共通教育センター 所長 伊豫田 隆俊

2017年,企業会計審議会監査部会において,「監査報告書の透明化」についての議論が本格的に始まった(本誌No.3331・ 2頁 など)。また,東芝事件を始めとした「会計不正と監査」についても,近年話題になることが多い。

本誌はこの度,企業会計審議会監査部会で部会長を務めるとともに,日本監査研究学会で会長も務めている伊豫田隆俊・甲南大学共通教育センター所長にインタビューを実施。「監査報告書の透明化」や「会計不正と監査」,さらには今後の展望などについて話を聞いた。

1.企業会計審議会監査部会での審議

①監査報告書の透明化について

―まず初めに,この議論に至った経緯からお聞かせ頂けますか。

東芝の不正会計を契機として,会計監査の信頼性を確保するための諸施策について検討するため,「会計監査の在り方に関する懇談会」(以下,懇談会)が2015年に設置されました。この懇談会は,2016年3月に報告書を公表し,その中で今後実施すべき施策を提言として示しています。その一つとして監査報告書の透明化が取り上げられたのです。

ここで監査報告書の透明化というのは,監査上の主要な...