世界の会計事務所から 第17回 トルコ 2つの決算書の間で揺れるトルコ
KPMGトルコ イスタンブール事務所 シニアマネジャー 平沼 美佳
1.2つの決算書
ある日の午後,クライアントから電話がかかってきた。
「前期の利益を配当したいのですが,2つの決算書の利益が違いすぎて,どっちの利益をもとに配当可能利益を計算して良いかわからなくて,困っているんですよ。」
トルコでこのような問題に直面している企業は,数知れない。今日のトルコでは,2つの決算書を作成している企業が急増している。決算書が2つあるため,配当可能利益の計算などの際に混乱を招いているのである。2つの決算書とは,租税手続法に基づく決算書とIFRS(国際会計基準)に基づく決算書のことである。
そもそも,トルコの企業がなぜ2つの決算書を作成するようになったのかについて,これまでの経緯をご紹介したい。
2.トルコの会計基準
トルコの会計基準は,1961年に制定された租税手続法(Tax Procedure Code)によって定められている。トルコの会計基準の大きな特徴として,下記が挙げられる。
・ 税金計算を目的とした会計基準である。
・ 貸倒引当金は裁判になったり,法的措置がとられるまでは計上しない。
・ 固定資産に対する減損会計の適用は無い。
・ 工事契約に関する収益の認識は工事完成基準の...
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