ハーフタイム デジタルマネーの便利さと課題

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昨年末訪れた中国の地方都市では,誰でも店舗や有料道路の料金所でスマホをかざして決済する光景に驚いた。友人によると,スマホさえあればいまや紙幣もコインも持ち歩く必要がないという。さすがに青空市では現金決済する人が多かったが,軒先のある店舗ならばQRコードを貼った板を立ててスマホ決済に便宜を図っていた。鮮魚・精肉・畑から引っこ抜いて来たばかりの生野菜を扱う人は,もはや現金を受払いする必要がないのだ。多くの人手を経由してきた不潔な紙幣に触る必要もなく,財布なしで生活できるのは快適だ。

東京でもスイカで改札口をスイスイ通り駅の売店で買い物もできる。あの便利さを街全体に拡大したのがスマホによるデジタルマネーである。では中国でスマホ決済が爆発的に進んだのはなぜだろうか。WSJ(4/Jan付)の中国関連記事(The cashless society)や米国IT事情(K・ケリーの"The inevitable"など)に照らして見聞記を整理してみたい。

第1の要因は巨大IT企業アリババとテンセントの戦略。彼らは顧客情報に多大な価値を見出し,商店から徴収する取引手数料をわずか0.6%に抑えている(ちなみに,日...